舞台『弱虫ペダル』総北新世代、始動
初日直前キャストコメント&稽古場レポート

14:05 シーン稽古開始。
全員、いきなりの全力疾走。
舞台装置のスロープを動かすメンバーも、負けじと全力疾走。
西田シャトナーも、当然フルパワーで演出。
たちまち稽古場の熱気が上がる。
セリフのひと言、仕草のひとつに至るまで細かく作り込んでいく。「これだ!」というタイミングやポーズが見付かるまで、1つのシーンが繰り返される。
原作・キャラクターのファン、そして舞台シリーズのファンにも、たまらない“ペダステ”の精密さが、こうして作られていく。
演出が固まったところで、次のシーン稽古へ。
ここで、某キャラクターの決めセリフに対してミーティングが始まった。
「キメ」がキマる瞬間を求め、キャストたちも意見を出し合い、様々なパターンをシャトナーに提示する。
何通りものパターンに挑戦した結果、この決めセリフの言い方は、当初には無かった意外なバージョンに。
全員で正解を求め、追求していく一体感にワクワクさせられる稽古場だ。


休憩時間は、ケータリングで飲み物を補充するキャスト、僅かな合間にも原作を読み直すキャスト、気になるシーンの稽古に励むキャストと様々。鏡の前で走り方の研究を黙々と続けるキャストもいる。
大きく騒いだり、ふざけたりしているキャストはもちろん皆無。“仕事場”であり“勝負の場所”であることが伝わってくる。
次のシーン稽古では、シャトナーの厳しいオーダーが飛んだ。
音楽と装置、演出と体のパフォーマンスの一致を求めるシャトナーに、キャストたちは必死に食らいついていく。
一瞬張り詰めた空気が一変したのは、その次のシーン稽古。
「モブ」と呼ばれるメインキャラクター以外の役どころを演じるキャストに、シャトナーが特徴付けを提案し始めたところ、勢いが止まらない。
そのシーンには出ていないキャストもアイディア出しに加わり、「モブ」キャラの色がどんどん濃くなっていく。
口調も歩き方もハッキリとしたキャラを演じることになったキャストが自信を持ち、輝きを放つのが手に取るように分かった。


シャトナーは時折、演出席の後ろのモニターを覗きに向かう。
映し出されているのは、稽古場の2Fに設置されたカメラが映す、全体の俯瞰図。
全ての見え方を確認しつつ、舞台装置の模型も使って各自の動きをキャストたちに説明していく。
シーンを作り込む過程で、走る向きなどが全て反転した場面もあったが、キャストたちに動揺はない。演出の変更にキャスト・スタッフ全員がスムーズに応え、完成度が高まっていく。
「パワーマイム」と呼ばれるシャトナー独自の演出方法に、“ペダステ”ならではの表現が加わった場合、独特の名称が付く。
その「技名」を交わし合い、お互いの走りをチェックするキャストの姿からは、この舞台を作っている一員なのだという意識が力強く流れているように感じた。
集中力が必要とされる稽古場だが、河原田巧也が演じる泉田塔一郎のハリキリっぷりに、見ていたキャストから笑いが起こったり、青八木役の八島の仕草に、総北メンバーが「可愛いなあ」と癒されていたりと、和やかな空気が流れる場面も度々見受けられた。
20:00 稽古終了。
カーテンコールのチェックが終わったところで、本日の稽古は終了。
翌日の稽古内容が説明され、キャストたちは解散となった。
帰り支度をするキャスト、居残りして練習を続けるキャストの横で、スタッフの大道具修正、打ち合わせなどが慌ただしく始まっていた。


走りも叫びも、稽古場から常に全力。
更なるパフォーマンスを求め、走り続ける“ペダステ”。
このエネルギーの全ては、観客の待つ劇場で解き放たれる。
熱気をぜひ客席で受け止めたい。